はじめに
先日、「一括投資と積み立て投資はどちらが良いか?」とご質問をいただきました。
2024年1月から新NISAが始まるので、短期間で上限金額まで一括投資するか、長期的に積み立てるか悩まれておられました。
投資は私たちの資産を増やす手段のひとつです。
投資資金や家庭環境などは様々なので、あなたに適した投資手法を選択する必要があります。
とはいえ、どの投資手法を選んだらよいか悩みどころですよね。
そこで今回は、一括投資と積み立て投資というふたつの方法を比較し、それぞれの特徴やメリット、デメリットを探っていきます。
当記事を読んでいただきたい方
- 投資初心者の方
- 一括投資と積み立て投資のどちらを行えば良いか悩んでいる方
今回のゴール
一括投資と積み立て投資の特徴を理解し、自分に適した投資手法を選ぶことができる。
一括投資の定義と特徴
一括投資とは
一括投資とは、持っている投資資金を一度にすべて投資する方法です。
例えば、あなたが500万円を持っているとしましょう。
そして、これを株やインデックスファンドなどの投資に使いたいと思ったとします。
この500万円を一度に全部使って投資商品を購入するのが一括投資です。
メリット
大きな利益の可能性
市場が上昇している場合、資金全額がその利益を受けることができます。
たとえば、ある投資商品に500万円を投資し、1年後に価格が5%上昇したとしましょう。
この場合に投資商品を売却して受けられる利益は、500万円×5%で25万円になります。
購入の判断が少なくて済む
一括投資は一度に投資資金をすべて使います。
つまり、投資するタイミングは、一度だけ判断すれば良いことになります。
あとは、投資した商品を運用していくだけです。
デメリット
大きな損失の可能性
市場が下落している場合、資金全額がその影響を受けることができます。
たとえば、ある投資商品に500万円を一括投資し、1年後に10%下落したとしましょう。
この場合に投資商品を売却して受ける損失は、500万円×10%で50万円になります。
つまり、市場の上昇時の利益は大きいですが、下落時には大きな損失のリスクがあります。
購入するタイミングの難しさ
適切な投資タイミングを逃すと、利益を獲得する機会を逃してしまう可能性があります。
例えば、市場が上がり切った時に一括投資をしても、期待した利益を獲得することができません。
それどころか、購入後に市場が下落すると、損失が大きくなる可能性があります。
積み立て投資の定義と特徴
積み立て投資とは
毎月や毎四半期などの一定の期間ごとに、一定額を投資する方法です。
再び、あなたが500万円の投資資金を持っている例で考えてみましょう。
毎月10万円ずつ、50ヶ月にわたって株やインデックスファンドを購入するとします。
これが積み立て投資です。
メリット
市場価格の変動による影響の緩和
積み立て投資は期間を分散して投資します。
その分、一括投資に比べ、市場価格の変動による影響を受けにくくなります。
いわゆるドル・コスト平均法と呼ばれる投資手法の効果です。
また、市場が下落しても、投資前の資産は影響を受けません。
少額投資が可能
積み立て投資は、定期的に一定額を積み立てる投資手法です。
なので、少額から投資を始めることができます。
仮に、500万円を一括投資する場合は、投資を開始する時点で500万円の投資資金が必要です。
しかし、毎月10万円を積み立てる投資なら、積み立て時に10万円があれば投資ができます。
デメリット
利益の平準化
積み立て投資は、市場価格の変動による影響を緩和できます。
しかし、これは損失だけでなく、利益についても同様なのです。
つまり、損失リスクが小さい分、利益のリスクも小さいということです。
例えば、市場が継続的に上昇している場合、一括投資よりも獲得する利益は小さくなります。
いわゆる、複利の効果による差です。
どちらを選ぶべきかの考慮ポイント
一括投資と積み立て投資、どちらの方法が自分に適しているのかを考える必要があります。
以下の要点を考慮することで、投資手法を選択する際の手助けになります。
投資の目的
短期間での大きな利益を追求する場合や、長期間の安定したリターンを求める場合など、目的に応じて適切な方法が異なります。
例えば、5年後に新車の購入資金にするために100万円を2倍にしたい人と、10年後の子供の教育資金のために100万円を2倍にしたい人とでは、投資手法が異なる場合があります。
投資期間が短ければ、短い時間で大きな利益を得られるように、早い段階でまとまった資金を投資する必要が出てきます。
一方、投資期間が長ければ、期限までに目標が達成できれば良いので、無理のない範囲で投資することができます。
投資期間
短期間での投資や、長期間にわたる資産の増加を目指すのかによって、適切な方法が変わります。
例えば、1~3年で資産を増やしたい場合、一括投資であれば、その後の価格上昇によっては目標額に到達する可能性があります。
逆に、積み立て投資は定期的に定額を積み立てるので、その後の価格上昇があったとしても、目標額に到達する可能性が低くなります。
なので、あなたに適した投資手法を選択するために、投資期間を設定することは大切です。
投資資金の状況
投資資金の状況によっても適切な方法が異なります。
例えば、一度に多くの資金を投資できるか、毎月の一定の額しか利用できないのかです。
投資は余剰資金でやるのが良いとされています。
なので、投資資金の状況を把握することは大切です。
リスク許容度
市場の変動に対する自分のリスク許容度を考慮します。
高いリスクを取れる人と、安全を重視する人とでは、投資方法が異なる場合があります。
例えば、100万円を投資した場合に、50%の下落を許容できる人と10%の下落までしか許容できない人とでは、投資手法が異なる可能性があります。
損失をどの程度許容できるかを考慮することは、あなたに適した投資手法を選択する手助けのひとつになります。
一括投資と積み立て投資のシミュレーション
このシミュレーションは、投資手法による投資結果の違いを単純化したものです。
経済状況等の動向は考慮していませんので、必ずこの結果になるとは限らない点はご理解ください。
条件
- 投資資金:120万円
- 投資期間:10年
- 利回り:3%
- 利息計算:1年複利
- 係数:一括投資は終価係数、積み立て投資は年金終価係数(小数第5位以下は四捨五入)
一括投資
投資の開始時に120万円を全額投資する方法を考えてみます。
今回の投資結果の計算には、投資額120万円に終価係数を乗じて計算しています。
終価係数とは、現在の金額を複利で運用した場合の、一定期間後の金額を求める場合に使用する係数です。
計算結果は以下の通りです。
年 | 終価係数 | 計算結果(円) |
1 | 1.0300 | 1,236,000 |
2 | 1.0609 | 1,273,080 |
3 | 1.0927 | 1,311,240 |
4 | 1.1225 | 1,350,600 |
5 | 1.1593 | 1,391,160 |
6 | 1.1941 | 1,432,920 |
7 | 1.2299 | 1,475,880 |
8 | 1.2668 | 1,520,160 |
9 | 1.3048 | 1,565,760 |
10 | 1.3439 | 1,612,680 |
積み立て投資
毎年12万円ずつ積み立てることを考えてみます。
1年目に12万円、2年目に12万円・・・10年目に12万円と総額で120万円を積み立てます。
今回の投資結果の計算には、積み立て額12万円に年金終価係数を乗じて計算しています。
年金終価係数とは、毎年一定額を積み立てた場合の、一定期間後の元利合計を求める場合に使用する係数です。
計算結果は以下の通りです。
年 | 年金終価係数 | 投資結果(円) |
1 | 1.0000 | 120,000 |
2 | 2.0300 | 243.600 |
3 | 3.0909 | 370,908 |
4 | 4.1836 | 502,032 |
5 | 5.3091 | 637,092 |
6 | 6.4684 | 776,208 |
7 | 7.6625 | 919,500 |
8 | 8.8923 | 1,067,076 |
9 | 10.1591 | 1,219,092 |
10 | 11.4639 | 1,375,668 |
軍配は一括投資に・・・しかし
シミュレーションでは、一括投資の方が資産が拡大する結果になりました。
これは、複利効果の違いによるものです。
一括投資の方が毎年の複利の恩恵を受ける金額が多いので、資産の拡大が早いのです。
しかし、実際には必ず毎年3%ずつ成長する投資商品はありません。
世界情勢や経済状況の変化などにより、市場は上昇と下落を繰り返すからです。
なので、必ず一括投資の方が有利とはなりません。
まとめ
投資手法は、個人の目的、投資資金、リスク許容度などを考慮して、適切なものを選択する必要があります。
つまり、一括投資と積み立て投資、どちらがベストなのかは人それぞれということです。
今回の記事が、あなたに適した投資ライフを見つける参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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